じぶんインタビュー

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自分に気づいて自分を築く自分インタビュー

hikami naomi

波乱の半生の末にたどりついた、
「わたしに還る場」づくりという使命

社会福祉士/保育士/易学鑑定士/シンギング・リンセラピスト
氷上尚美さん

福祉の現場で働くかたわら、ヒーリング楽器演奏や易学鑑定などを通して人に寄り添ってきた氷上尚美さん。還暦を迎えた今年、新たな使命を実感している。それは、情報があふれる社会で自分を生きるために大切な「わたしに還る場」を提供すること。波乱に満ちた半生の末に見出した、経験と学びの集大成とも呼べる使命だ。

自らの経験を生かし、「わたしに還る」をサポート

インタビューの1週間前。尚美さんは本来の自分に還るような感覚を味わった。ヨガとのコラボイベントでシンギング・リンを奏でた時だ。シンギング・リンとは広い音域の音を同時に奏でることができる倍音楽器で、その周波数には癒しや心身のバランスを調和する効果が期待されている。

2010年にこの楽器に出あって以来、各地でヒーリングライブをおこなってきた。この数年は目まぐるしい日々が続き触れていなかったが、久しぶりに音を奏で、集った人たちにも自身にもヒーリングが起きたのを感じた。「ああ、この感覚だ。」喜びがあふれた。これを機に。多くの人にヒーリングの場を提供していきたいという思いが芽生えた。

「混沌とした現代社会で流されず生きるには、自分の内に意識を向け。自分をととのえておくことが大切。でも、それってなかなか一人ではできないと思うんです。瞑想へ導く音や同じ場に集う人たちのエネルギーの共振共鳴があってこそ、より深く内に向かえます。そういう場を必要としている人は、きっとたくさんいるんじゃないかな」

そう話す尚美さんにも。ヒーリングを求める日々があった。
「シンギング・リンだけでなく、易学鑑定や健やかに生きるための知恵の追及を通して、わたし自身も自分に向き合ってきました。それらを融合させ、ヒーリング、易学鑑定カウンセリング、おはなし会を軸に、誰かの気づきと自己探求をサポートできたら。名前をつけるなら、『わたしに還る場』といえるでしょうか」

福祉の現場で感じた葛藤も糧に

尚美さんが場づくりに関心を持つに至ったきっかけは、もうひとつある。

現在、小中学校でスクールソーシャルワーカー(SSW)として勤務する尚美さん。SSWは、子どもたちやその家族が抱える課題を解決する福祉の専門家だ。

現場に入って3年目、「子どもたちに関われるのはうれしいし、やりがいはあります。でも、自分が本当に伝えたいことを伝えられないもどかしさも感じています」とジレンマを抱えるように。

情報化社会にあって、子どもたち一人ひとりに寄り添った支援が必要なのに、現場ではその時間を十分とることが難しい。情報を一方的に与えるのではなく選択肢を示したいが、立場上それがかなわないことも多い。伝えられることの限界を目の当たりにし、学校という枠を超えて子どもとその親御さんを支援できる機会がないかと模索していた。

激動の日々を生き抜いた自分が、今の自分を築いた

そもそも尚美さんがSSWの職に就いたのは、教員だった母の影響もあるが、自身が福祉の当事者であったからだ。
姫路で生まれ育った尚美さん。温室育ちで20代で結婚し、専業主婦に。子育てをしながら大学で福祉関係の資格を取ったが、先生には「苦労を知らないきみには相談したくない」と言われたという。
「あの時は、まさか自分が当事者になるなんて思いませんでした」

前夫の転勤で渡米しカリフォルニア州で4年半過ごしたが、2002年に離婚。そこから人生は一変した。
子どもたちを連れて帰国してからは、資格を活かし、病院や児童養護施設で働いた。2010年に再婚するやいなや、各地を転々とするジプシー生活に突入。夫が始めたヴィーガン専門パン屋を手伝いながら、保育園や児童館に勤務した。その間、夫のうつ、自身のメンタル不調を経験。次から次へと起こるさまざまな出来事に、息つく暇もなかった。

「人のつながりを大事にしながら場をつくっていきたい。生きているあいだにたくさんの出逢いがしたいです」
そう話す尚美さんの原動力は、人だ。「人が好き」という背景には、実は幼少期や最初の結婚生活で経験した孤独感がある。
「孤独は人にとっていちばんつらい。人とのつながりは、福祉的にも人が生きていくうえで大事なことです。人が人から感じるぬくもりは、SNSやAIでは満たせません。この場に来て、自分は一人じゃないんだと安心してもらいたい」
実体験から紡がれる尚美さんの言葉は、人が人と触れあう意義を再認識させてくれる。コロナ禍を経た今だから、なおさらだ。

「どんなふうに発信すれば必要な人に届けられるか、それが課題です。今の仕事をどうするかという迷いもありますね。でも、何かを始めるには何かを手放すことも必要。今、決断の時だと思います」
実際に場を運営するにあたって、課題や迷いもある。しかし、尚美さんには自ら未来を切り開く行動力と、人が好きという強みがある。

いつか言われた「苦労を知らないきみ」はもういない。
波乱の末に見出した使命を胸に、尚美さんは今歩き出した。

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